vol.28 道東の奇跡 「渓流釣りと絶景珈琲」

フライフィッシングの聖地として、世界に知られる北海道。
この時期恒例となった渓流釣りに、今年もお馴染み、吉田聡さんのナビゲーションで出かけました。

目指すは、幻の渓流魚、オショロコマ。
イワナの仲間でありながら、さらに冷たい水を好むこの魚は、源流近くの澄んだ流れにだけひっそりと棲み、その名はアイヌ語の「オソル・コ・オマ(尾で床を掘る魚)」に由来するといいます。
この日訪れたのは斜里川。山あいに入ると植生が変わり、生態系の転調とともに美しい川が見えてきました。

水に足をひたし、竿を振ると、次々と現れる色鮮やかなオショロコマ。
しかし、彼らは絶滅危惧種。釣果は一人一匹まで、あとはすべてリリース。

釣りの真髄は静寂にあり。
自然に敬意が肝要といいます。とりわけフライフィッシングは、魚への負担を最小限にとどめる「キャッチ&リリース」の精神が根づいており、吉田さんの所作からは、その哲学がそっとにじみます。

そして、澄み渡る空気と水の中で迎える珈琲の時間。
今回はNPOメンバーでもあるクラウドナインコーヒー、小山さんの自家焙煎。
知床の名菓、知床カヌレとともにいただく一杯は、まさに“自然の祝福”と呼びたくなる味わいでした。

帰り道、「さくらの滝」では、滝を昇るサクラマスの姿にしばし見惚れ、

硫黄山のふもとに咲くエゾイソツツジの白い群れに見送られながら、私たちは自然の奇跡に満ちた一日を胸に帰路につきました。

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