第一部
貝澤美和子先生の宴


今回は、猛禽類研究所・齊藤慶輔先生のご縁により、平取町二風谷より、貝澤美和子先生 をお迎えいたしました。
貝澤先生は平取アイヌ文化保存会 食文化部長として、伝統料理の普及と後継者の育成に長年尽力されており、このたびTAMATEBAKO AYNUにて、心づくしのアイヌ伝統料理の宴をご披露くださいました。




さらに、二風谷の精神的支柱と称される 貝澤耕一先生 、御子息の 太一さんと共にご臨席くださいました。
耕一先生は工芸、言葉、食文化、儀礼など幅広い分野で地域を導き、文化を“残す”だけではなく“生かす”実践を続けてこられた方であり、その存在感はまさに二風谷の象徴。

立たれるだけで重みと温もりが宿っていました。そして、ご家族が寄り添う姿は、
文化が家庭の日常の中で生き続け、
自然に未来へと受け継がれていくことを鮮やかに示し、参加者一同に深い感銘を与えました。





⚪︎コサヨ
豆、シプㇱケㇷ゚(イナキビ)、シケㇾペ(キハダの実)
⚪︎ラタㇱケㇷ゚
豆、カボチャ、シケㇾペ
⚪︎チタタㇷ゚
カカウ(鮭の氷頭)、ウㇷ゚(白子)
⚪︎ユㇰオハウ(鹿の汁物)
ユㇰカㇺ(鹿肉)、プクサ(行者ニンニク)、プクサキナ(二輪草)、コㇿコニ(フキ)、セタコㇿコニ(ゴボウ)、エモ(ジャガイモ)、ニンジン
⚪︎チポルㇱエモ
チポㇿ(イクラ)、エモ(ジャガイモ)
⚪︎シプㇱケㇷ゚メシ
シプㇱケㇷ゚(イナキビ)、シアマㇺ(米)
⚪︎コンプシト
シト(イナキビ・米)、コンプ(昆布)
⚪︎トノト
イナキビ、米、麹
⚪︎野菜のシラリ(酒粕)漬け
⚪︎プクサ(行者ニンニク)漬け
⚪︎エント茶
エント(ナギナタコウジュ)

大地の恵みを余すところなく活かしたお料理は、自然と共に生きる知恵の結晶であり、一皿ごとに文化の記憶が息づいていました。
美和子先生の手から紡がれる味わい、耕一先生の圧倒的な存在感、ご家族の温かなまなざしが重なり合い、「食が文化を伝え、人が文化を体現し、家族が文化を未来へと受け渡す」 という姿を深く感じ取るひとときとなりました。
引き続き
第二部は弟子屈町公民館にて
お馴染み、札幌大学教授の本田優子先生による「アイヌの食文化」の講演はアイヌの伝統的食文化の概要と世界感。
貝澤美和子先生による、平戸町の歴史とアイヌの食文化の変遷。アイヌ料理と山菜。栽培穀物についてのお話しとなりました。
先生方のお話から伝わったことは、




アイヌの生活は大地の恵みと共生し、自然の一部として生きる知恵に支えられている。
必要以上に採らず、次の世代や他の生き物のために残すことで、自然の循環を守ってきた。
未熟な作物や放置された芋も無駄にせず、工夫して食べる文化。
この「食べられるものは無駄にしない」という精神は、自然との調和を大切にする暮らしの知恵。
近年、人間の力と数の増加でそのバランスは崩れつつあり、今こそ、自然と共に生きてきたアイヌ文化に学ぶべきことが多いということが、食文化を通じ、更に響いてまいりました。

