vol.35 食文化・第四回 道東名物づくり「北海道食材の本質を引き出す」

函館に生まれ、パリ、コートダジュール、そしてガストロノミーの聖地ロアンヌ〈トロワグロ〉で研鑽を積み、現在は札幌で自身のレストランを主宰する料理人・館岡武士氏をお招きし、道東の大地と海の恵みに真っ向から挑んでいただきました。

朝の澄んだ冷気がそのまま夜まで透明に残る、道東の晩秋。凛とした空気の中で始まった食文化の会は、食材そのものの声を聴き、美しさと力をあますことなく引き出す時間となりました。

料理は生産者の名とともに。

Menu – le 25 novembre 2025

Soupe

知床・古坂さんの鮭
白子の燻製
北海道各地の野菜

→ 知床のドン古坂さんの鮭に、ほのかに薫る白子。大地からあがってくる野菜の甘みが、胃に優しいスープからスタート。

Huitre

厚岸 中嶋さん「かきえもん」竹下農場 リコッタチーズ羅臼昆布

→ 海と乳、そして昆布の旨味が溶け合う、北海道ならではの三位一体。
厚岸の深い潮の滋味を、リコッタがやわらかく包み込み、厚岸の牡蠣は貴婦人のように。

キムンカムイ(山の神)

赤井川 ヒグマ
江別 ウイキョウ

→ 北海道の精神性を象徴する山の神・ヒグマ。
山野の力強さと甘いウイキョウの香りが響き合う、神話の気配をまとうひと皿。

Poisson

厚岸 浅利
根室 たち
アンコウ
帆立

→ これはシェフのトロワグロでの姿を思い起こす絶妙な火入れの極上の一皿。海の温度、潮の流れ、冬を知らせる魚たち。それぞれの旨味が重なり、道東の海そのものを食べているような深い味わいでした。

Agneau

大沼 流山仔羊
厚真・江別・真狩・音更の野菜

→ 澄んだ空気と草の香りが宿る仔羊。多様な土地の野菜が寄り添い、生命の循環を感じさせる豊かな一皿。

Thé raisin

Gnocchi

上士幌 村上さんのじゃがいも
竹下農場 マリボー

→ 北海道のじゃがいもの強さと甘さが際立つ、静謐な一口。
マリボーと重層的なスープのコクがやわらかく伸びていきます。

Dessert

滝上 飯尾さん
丸紅薄荷・白樺樹液

→ 森の風、白樺の透明な気配がふっと立ちのぼるデザート。
薄荷の香りが、極上のアイスクリームに。ババとシャインマスカット、清新なひとすじを残しました。

余市 山田堂さん

→ 葡萄の温度がそのまま茶になったような、やさしい締めくくりです。

食材が語り、皿が息づく晩餐

館岡氏は、にこやかな笑顔。
器を選び、一つひとつの食材に敬意を払いながら、丁寧な指先で新たな息吹を吹き込んでいきます。
土地と向き合い、素材と対話しながら生まれる一皿は、どれも凛とした美しさを湛え、北海道の「風土の声」をそのまま食卓へと運んでくれました。

静かに始まった晩餐は、やがて深い歓談とともに夜更けまで続き、
道東の大地と海が育んだ “いのちの連なり” を味わう時間となりました。

http://www.tateokatakeshi.com/staff/

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